抜群の”カッコよさ”で観客を魅了! 神野美伽、『コンサート2015』で改めて実力の高さ示す
4月24日、東京・渋谷公会堂で神野美伽が、毎年の恒例となっているコンサートを開いた。
「浮雲ふたり」「あかね雲」「雪簾(ゆきすだれ)」などの代表曲を持ち、演歌・歌謡曲ファンにはお馴染みだが、デビュー32年目に入った現在まで、彼女に世間に知れ渡った大ヒットはない。しかし、コンサートは昼夜とも満席。しかも開演前から、ファンの間から湧き上がる期待感が充満している。
それは、ステージでの圧倒的な歌唱力、表現力のため。演歌・歌謡曲というジャンルの壁を越えても、現在ソロ歌手でこれだけ充実したステージを見せられる人は、なかなかいない。特に、国内の歌謡界・音楽業界を覆う閉塞感から、新たな展開を求めてニューヨークでのライブを始めた昨年以降は、確かな手応えと可能性を得て、以前にも増して活き活きと力強い歌を聞かせている彼女。この日のステージでも、100%出し切っていながら、なお余力を感じさせる圧倒的な歌声で全19曲を歌い、観客を魅了した。
ステージ狭しと動き回る姿は颯爽として、歌うアスリートと呼びたくなる印象。客席のファンからは、その動き、表情、決めのポーズに思わず「カッコいい…!」の声が漏れた。
冒頭のMCで「昼の部で、力を出し切ってしまって…」などと笑いながらスタートした夜の部でも、どこにそれほどの力が!?と思わせるほどの歌と動きで観客を惹きつける彼女。ステージ狭しと動き回る姿は颯爽として、またその動作の一つひとつが、いわゆる”キレッキレ”。日頃からの入念なメンテナンスの賜物だが、体幹の強さと身体能力の高さを窺わせて、歌うアスリートと呼びたくなる印象。あれほどの躍動感でステージを見せた歌手と言えば、演歌系では恐らく都はるみ以来。客席のファンからは、その動き、表情、決めのポーズに思わず「カッコいい…!」の声が漏れた。
「あんたの大阪」から22日に発売されたばかりの新曲「風岬」まで10曲を披露した前半でも、ひと口に”演歌”と言いながら、豊富なバリエーションを備えていることを感じさせた神野だが、彼女の表現力の豊かさを実感させたのは、「オー・シャンゼリゼ」(シャンソンの代表曲)からの後半。
以前から演歌以外の歌もステージでうたっている彼女だが、新たな展開への意欲に燃える今、感性はさらに磨かれ、経験は味わいを加えて、「ひまわり」(マルチェロ・マストロヤンニ、ソフィア・ローレン主演の映画主題曲に日本語詞を付けたもの)「秘恋」(ちあきなおみも歌っているファド)などを、魅力いっぱいに歌って、まるでオリジナルのような聴き応え。特に「秘恋」は絶品とも言うべき出来で、今後の柱の一つになるのではないかと思えた。
プログレッシブ・ロックを想わせるようなアレンジで場内の空気を切り換える。保守的なイメージを抱かれることの多い”演歌”とは一線を画した印象で実に魅力的。
ニューヨークのライブハウスで演じた作品を披露した終盤では、バックバンドの神野組が「リンゴ追分」を演奏。プログレッシブ・ロックを想わせるようなアレンジで場内の空気を切り換えると、続いて歌われた「ひばりの佐渡情話」は純邦楽の香り溢れる編曲。この繋ぎの意外性と面白さには、神野やバック・ミュージシャンが、まさに音を楽しんでいるのが感じられ、保守的なイメージを抱かれることの多い”演歌”とは一線を画した印象で実に魅力的だった。
その後は「座頭市子守唄」「酔歌(ソーラン節入り) 」「無法松の一生」と、歌うアスリートの真骨頂とも言える”カッコいい”曲が続く。どれを取っても、いま彼女以上に聞かせられる人を探すのは難しいのではないかと思うような出来栄えで、殊に「無法松~」に込められたエネルギーの大きさは、およそ2,000の観客を圧倒するに十分なもの。何事においても純度の高さは感動を誘うが、まさに渾身の力を注ぎ作品に向き合った歌の純度の高さには思わず目頭が熱くなった。
「無法松~」を歌い終えると、神野は下手にハケたが、客席からはアンコールを求める拍手が起こる。神野組のメンバーは定位置を離れないので、再び彼女が歌うことは明らか。約束されたアンコールは、よくあるパターンだが、ここはいっそ全員がステージを下りてもよかったのではないかと思った。何故なら、ファンのアンコールは、それに応えずにはいられないだろうと思わせるほどに熱心だったから。高齢者も多い、演歌系の公演では珍しい光景。それは、神野が観客に与えた感動の大きさを物語り、客席の多くがリピーターになるだろうと予測させるものだった。
料金や報酬に見合った仕事をするのがプロだとすれば、SS席6,500円以上の満足感を与えた神野はトップ・プロ。それが勝手な思い込みでないことは、帰り道で熱く感想を語り合う観客の表情や口調が証明していた。
神野美伽「悲しいことも辛いこともあるけれど、たった一度の人生、生まれてきたこと、いま自分がいることを喜びながら生きていきましょう」
「神様が歌うということを与えてくれて本当に幸せです」と話し、「悲しいことも辛いこともあるけれど、たった一度の人生、生まれてきたこと、いま自分がいることを喜びながら生きていきましょう」と呼び掛ける「喜びましょう」で神野はコンサートの幕を閉じた。
時代の流れと共に変化し、さらに柔軟な対応を求められている演歌・歌謡曲の世界。いかに歌うか、いかに生きるかは、一人ひとりの歌手にとって大きな課題となっているが、太平洋も軽く越えてしまったこの人なら、時代も世代も越えられるはずとの確信が、このコンサートによりさらに深まった。
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