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【演歌とは】敏腕演歌ディレクターXに聞いた!演歌はどうやって作られるの?

公開日: : 最終更新日:2015/03/06 まとめ記事, ニュース, 取材裏話, 特集 , , ,

大手質問サイトでも多く寄せられる、「演歌とは?」あるいは「演歌と歌謡曲の違いとは?」の疑問。
しかしながら、決定的な違いや定義に関しては、簡単に導き出せるものではありません。長い間、演歌を専門として楽曲を配信してきた【携帯で演歌】は、ある角度から、この答えに近づいていこうと考えました。
普段、演歌の作り手達と接する機会を活かし、現役の演歌ディレクターにインタビューを行いました!今回はその模様をお届けします!

「明日の演歌」特別企画
敏腕演歌ディレクターXに聞く!!演歌ができるまで

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演歌の作詞・作曲

演歌のルーツは、日本の歌謡・流行歌。これらから派生したジャンルの1つであるといわれています。
では実際に、演歌は、どのようにして制作されるのでしょうか。また、他ジャンルの音楽と比較した時、演歌には、どのような違いがあるのでしょうか。今回は楽曲制作にスポットを当て、その過程から違いを探ります。
演歌制作に長年携わり、現在も大物演歌歌手の楽曲を手掛ける敏腕演歌ディレクターXに伺いました!

──では、早速ですが、演歌の制作過程を教えてください。

X「そうですね、では、演歌とJ-POP(歌謡曲)に分けて、楽曲制作の過程と違いについてお話します。
まず、楽曲のはじまりはプロデューサーから。テーマや方向性を決めて「こんな曲を作ろう」という元のアイデアを提案するのがプロデューサーです。
それを受けて、作詞者・作曲者・編曲者を選んで、それぞれをコントロールしたり“仲介”を行うのがディレクター。ビルを建てるところの、現場監督のようなものですね。僕は主にこの作業を担っています。そして、まずは先に詞を作成するため、作詞家に発注します」

──先に詞を作成する、というのは演歌特有なのですか?

X「そうですね。9割方、作詞が先です。これは演歌特有でしょうね。昔の歌謡曲もそういったケースが多かったはず。現在のJ-POPは、シンガーソングライターの場合を除けば、作曲が先の方が多いんじゃないでしょうか。リリースの度に数曲作って、その中の1曲に歌詞を入れる流れが圧倒的に多いと思います」

──なるほど、ここからすでに真逆なんですね。では、詞を作っていただいた次は?

X「詞が作詞家から出来上がってくると、次は作曲です。作曲家を選び、曲を付けてもらいます。その中で、尺(曲の長さ)の関係で歌詞を短くしたり長くしたり、曲の方を直したり、細かな調整が入ります。この、作詞家と作曲家の間に入り中継をするのが、先ほど僕が言った、ディレクターの“仲介者”の意味ですね。こうして、曲が出来上がります。そして、これは、ケースバイケースなのですが…

・曲が出来上がり、そのまま編曲者の元に渡されるケース
・編曲の前にデモテープを作るケース

の2つがあります。後者の場合、詞と曲と歌手がちゃんとマッチしているか、ここで確認をする。先ほどお話した、複数曲作って、どの曲が歌手に合うか判断する、というやり方もあります。でも、これは、曲を作る過程に余裕がないとできないんですが。
そうして決定した楽曲が、やっと編曲家に渡ります」

 

「演歌は分業なんです」

X「次に編曲の打ち合わせをします。ここで、楽曲のキーを決定するんです。(歌手にメロディを実際に歌ってもらって、どの高さが最も良い(適した)響きが出せるかを決定するということ)デモテープを録ってしまっている場合はキーがすでに決定していますが、そうでない場合は、ここで作曲家が歌手にレッスンをしながらキーを決定し、編曲に入ります。恐らく、演歌とJ-POPで大きく違う部分がここじゃないかな」

──編曲家は、作曲家が作ったメロディに伴奏をつけたり(そのメロディを演奏するための楽器を選出したり、譜面に起こすこと)、アレンジを行うのが一般的なイメージとしてあります。その中で、どのような違いがあるのでしょうか?

X「J-POPと広く言ってしまうと、歌手が自分で作詞作曲する場合もありますから、ここからは例えばアイドルソングとします。先ほどもお話した通り、演歌とは逆に作曲→作詞の順で楽曲が出来上がりますよね。そして編曲ですが、アイドルソングの場合、作曲者がそのまま編曲を行うケースが割と多い。トラックメーカーと呼ばれる方が増えてきていてね。作曲をしながら、実際の音源も作っていくっていう。
対して、演歌の場合、作曲家は作曲しかしない。だから、編曲家が必ず必要で、つまり、完全に分業なんです。作詞は作詞家。作曲は作曲家。編曲は編曲家が行う。彼らは、その仕事に特化した専門家なんですね。他ジャンルの音楽と平行して演歌を作る方もたくさんいますが、演歌専門の制作者(作詞家・作曲家・編曲家)は、それぞれ10人くらいで廻していると言っても過言じゃないんじゃないかな」

──例えば、現在、今後の演歌制作を担っていく、新しい作家はいらっしゃるんですか?

X「それを育てなきゃいけないのは課題としてありますね。これがなかなか難しい。たまに、40代から50代の新人が現れることもあります。「ん?」と、年齢と若手という言葉が繋がらないと思われるかもしれませんが、演歌界では若手なんですよ(笑)」

──(笑)では、実際の編曲作業はいかがでしょう。

X「(演歌とアイドルソングを比較して)編曲家が違うということは、もちろん、編曲の方法も違います。演歌の編曲を担当するのは、先ほどもお話した通り、編曲を専門に行う人。その人のすごいところは、すべての演奏者(楽器)の楽譜が一覧になっているスコアという楽譜を頭の中で鳴らして作ることができる、というところなんです。編曲家の書いたスコアを、写譜屋さんが楽器それぞれの楽譜に起こして、レコーディング時に持ってくる。演歌の場合は、30人くらいの演奏者がひとつのスタジオに集まります。そこで出来た譜面を配り、「せーの」で演奏します。調整しながらやっても3回から4回で完成してしまうんです。大体、1曲1時間以内で録れますね。この、編曲から、音源の収録についてはアイドルソングなんかとは大きく違うところだと思いますよ」

──なるほど。では、アイドルソングの場合は。

X「J-POP、アイドルソングなどの場合は、作曲家が編曲まで行うことも多く、最初はコンピューターに演奏させ、機械じゃなかなか表現できない音、例えばギターだったり、サックスなどは実際に演奏した音を録って、後から差し替えたりします。そうやって一つ一つ調整していると、やっぱり時間はかかりますよね。アルバムだと一ヶ月や二ヶ月はかかってしまいますね」

──確かにそうですね。ロックバンドの場合なんかは、ギター・ベース・ドラムすべての楽器をそれぞれ録音し、機械で作ってあった音と差し替えるわけですもんね。

X「そう。編曲と同じで、ミキサーさんもひとつひとつ音を作っていくので、時間がかかります。逆を言えばJ-POPは時間をかけることができる、“最終的に良いものができればいい”という作り方なんです。
その後の歌入れに関しては演歌もアイドルソングもほとんど同じだと思いますよ」

──演歌とJ-POPは制作の過程にこのような違いがあったんですね。

X「ええ。そうなんです」

 

チャレンジのし甲斐のあるジャンル

──演歌の一般的な認識、ルーツとしては、日本の歌謡・流行曲から派生したジャンルの1つ、というのがほとんどだと思うのですが…。やはり、「演歌とは」の答えには、これが最もふさわしいでしょうか?

X「ルーツとしてはそうですが、明確な定義となると難しいですね。ひょっとすると、無いかもしれない。ただ、北島三郎さんが歌い始めた頃なんかは、“演歌歌手”といった言われ方はしていなかったと思うんですよね。その頃はまだ流行歌というのが主流で、演歌のようなものや、歌謡曲、アイドルソングのようなものも、すべての音楽がテレビやラジオで同じ土俵で披露されていて。そこから自然的に演歌が分かれていったんでしょうね」

──なるほど。ちなみに、この人のこの曲が今の演歌の始まり、というのはあったりするんでしょうか?

X「いやあ(笑)明確な定義がないように、始まりも明確にはわからないですね」

──では、最後に。普段、演歌を聴かない方々の中には、閉鎖的なイメージや、批判的な意見を持つ方もいらっしゃいます。

X「あ、「今時、(歌の世界観やメロディを指し)こんなのないだろう」とか?

──はい、そういった意見も多く見受けますね。

X「僕は、実はずっと、演歌を壊したい、新しい演歌を作りたいって考えてきたんです。若い方のように、演歌に馴染みのない方々が演歌を聴いて、「同じようなメロディで同じようなテーマの歌詞。どれもこれも一緒に聴こえる」という感想は、確かにあると思います。しかし、当然ながら、それがいいと言う方もたくさんいます。従来の演歌ファンの方がそうですね。楽曲そのものに関しては、事実、ほとんどの演歌がコード3つで演奏できますし、フレーズも似たようなものを使用していたりと、だから、若い世代の方が聴くと「つまらない」といった印象を受けてしまうんじゃないでしょうか。その閉鎖的なある一定の範疇の中でも、光り輝く言葉やメロディはまだまだ眠っていると思うんです。だからこそ、チャレンジのし甲斐がある、壊し甲斐のあるジャンルだと思うんですよ」

──Xさんが考える、演歌の魅力とは?

X「演歌歌手そのものの魅力です、かね」

──歌手自身に魅力があると?

X「ええ。なにか、「あっ」と思わせる、声だったり、表現だったり、そういう部分は惹かれるものがあります。演歌歌手はみんな、歌のすごい技術は持っていますが、歌って、技術的にうまいだけじゃ、やっぱりダメなんですよ。うまいだけじゃ伝わらない、というか、ピンときません。声に艶があったり、表現力があったり、伝えたいという気持ちがあれば、技術がなくとも、“いい歌”になりますからね。演歌は特にこの意味合いが強いジャンルだと思います。同じような世界観を歌っていても、声や表現力の個性で如何様にも変化する、それが演歌の魅力でしょうね」

 

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今回、ディレクターXにインタビューし、演歌の制作過程には、他ジャンルの楽曲制作とは異なる点がいくつもあることがわかりました。演歌ファンの方々は、今後は、歌い手だけではなく作詞者・作曲者・編曲者にも注目してみてください。今までとは違った角度で楽曲を楽しむことができるのではないでしょうか。
そして、やはり「演歌とは?」の明確な答えこそ導くことはできなかったものの、演歌がどのようにして出来上がるのかインタビューを行い、改めて、演歌が他ジャンルの音楽とは一線を画する存在だと感じました。さらに、「演歌には、まだまだ未知の魅力があるのでは?」というのも、今回のインタビューで感じました。【明日の演歌】では、またこういった角度からの演歌情報をお届けできればと思います!次回の記事もぜひお楽しみに!

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