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サエラ “ちあきなおみ”をテーマにライブを開催。サエラらしさを発揮

公開日: : 最終更新日:2015/03/06 ニュース , , , ,

1月23日、東京・浅草のアミューズカフェシアターで行われたライブ『サエラ「ちあきなおみ」を歌う!』を観た。

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サエラは、青森県五所川原市出身のユニット。ボーカルの菊地由利子、ピアノの高橋朋子により、1993年に結成された。地元を中心にした地道な活動が評判を呼び、17年後の2010年に徳間ジャパンコミュニケーションズから高橋の作詞作曲による「白もくれん」で念願のメジャー・デビュー、12年にはテイチクエンタテインメントに移籍して「セバマダノ~風の恋文~」(作詞:田久保真見、作曲:サエラ、編曲:溝口肇・サエラ)をリリースしている。

サエラ
白もくれん
J-Pop
¥200
provided courtesy of iTunes

フランス語で”あちらこちら”という意味を持つ”サエラ”というユニット名の通り、彼女たちが歌い演奏する音楽のジャンルは様々。歌謡曲、童謡、ニューミュージック、民謡…と、二人が気に入ったもの興味を覚えたものを自由に取り上げ、その全てをサエラ流の表現で届けている。
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今回のライブのテーマとなった”ちあきなおみ”は、所属プロダクションであるアミューズの大里洋吉会長より提案されたものだそうで、昭和を彩った抜群の歌唱力の持ち主として、美空ひばりと並び語られることも多い歌姫の代表曲が、菊地の歌声と高橋の演奏により平成の浅草に流れた。
披露されたのは「黄昏のビギン」「かもめの街」「星影の小径」「紅とんぼ」「夜へ急ぐ人」「ねぇあんた」「夜間飛行」「喝采」「四つのお願い」「別れたあとで」「朝がくるまえに」「雨に濡れた慕情」の12曲。わかる人にはわかるだろうが、並んだ曲はどれもが名曲としての魅力を備えながら個性的で、それぞれに異なる色合い。そうした幅広いレパートリーを、一曲ごとに見事に表現してみせたからこそ、ちあきの評価は高く、活動休止から20年以上が経った今も、歌謡界への復帰を望む声が途絶えることはない。

そんな大ちあきなおみのカバーでステージを構成するのだから、ピアノを奏でる高橋も勿論のことながら、歌う菊地が感じたプレッシャーは相当なものだったはず。この企画での公演は昨年にも行われていたので、多少なりとも成功のヒントは掴んでいたものと思うが、終了に際しての「へとへとです(笑)」という言葉は、まさに本音だっただろう。
菊地由利子の歌声は、実に健やかで屈託を感じさせることがない。それゆえに彼女が歌うと、そこに描かれた情景や心情が、余分な脚色なしに素直に伝わってきて心地よい。
しかし、ちあきなおみの代表作には「かもめの街」や「紅とんぼ」のように、人生の悲哀を知り、少なからぬ屈託を持つ主人公が登場する歌もある。ましてや「夜へ急ぐ人」などは、描かれた人物像や曲調、ちあきの独特な表現のため、菊地ならずとも簡単にカバーするのを許さない空気が溢れている。
そうした一曲一曲を、一体サエラはどのように聴かせるのか?
興味はそこに集中したのだが、ライブを観終わっての実感は、大里氏の提案は確かな成果を上げているというものだった。
正直に言って菊地の健康的な歌は、例えば「黄昏のビギン」の途中まで黄昏た雰囲気を感じさせず、これは黄昏時というより朝のイメージだなどとも思ったのだが、しかし聴いているうちに、降っていた雨が上がり、朱に染まった空の下を、風が爽やかに吹き抜ける夕景を思い浮かべていた。菊地の歌は、降る雨や木の葉を濡らしている雨のウェットな印象ではなく、そこを吹いていく風の清涼感によって、黄昏の街のイメージを生み出していたのだ。

サエラ
うた~by 60 sixty 歌謡曲編
J-Pop
¥200
provided courtesy of iTunes

圧倒的な個性と存在感を放つ、ちあきなおみの世界に踏み込み、自分ならではの表現をしてみせた菊地の歌と、ボーカルを包み込むような包容力にあふれた高橋のピアノが創り出す、サエラの世界がそこには広がっていた。
「かもめの街」でも「紅とんぼ」でも、サエラらしさは発揮されて、敢えて言えば「歌の主人公に比べて、心の傷が少ないかも…」と思わせるものもありはしたが、その分、純粋な可愛らしさを感じさせて魅力的だった。そして、その可愛らしさが醸し出す健気さゆえに「ねぇあんた」では思わずまぶたを濡らしてしまった。
注目の「夜へ急ぐ人」もオリジナルの色に染まってしまうことなく歌い演じ、プロとしての力量を示していたし、やはりサエラはサエラ、”あちらこちら”の二人なのだと嬉しく、ますます期待したくなった。

それにしても、この夜うたわれた各曲の素晴らしかったこと。「喝采」や「夜間飛行」のメロディーを作った中村泰士、「四つのお願い」「朝がくるまえに」などを作曲した鈴木淳といった人たちの才能の豊かさよ。今よりも創作の自由度が高い時代だったとは言え、改めてその素晴らしさを実感。同時に、もうこういう曲を書ける作家は現れないんだろうかと、寂しい気持ちにもなった。
などと言いはしても、サエラの魅力を味わえ、ちあきなおみ作品の魅力に改めて触れられる好企画だったことは間違いない。
同公演は、24、25日にも開かれ、さらに2月27(19時開演)、28日(13時、17時開演)と3月1日(13時開演)にも行われる予定。


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