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【コラム】吉澤嘉代子「ケケケ」と“下らない歌”

ミニアルバム『魔女図鑑』『幻倶楽部』などが話題沸騰!新人歌手・吉澤嘉代子の「ケケケ」に思う

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「ケケケ」の「なんだ、これ!?」感は飛び抜けている

10月22日に発売された吉澤嘉代子のセカンド・ミニ・アルバム『幻倶楽部』に収められている「ケケケ」という歌を聴いてたまげた。
歌い方はコミカルだが、その内容はコミカルを上回る下らなさで(わかり辛いな…)、下らないもの好きの筆者は堪らずに飛びついた。

「ケケケ」というタイトルを聞いて、人はどんな歌を想像するだろう? もちろん十人十色だとは思うが、それをムダ毛の歌だと思う人はごく僅かだろう。と言うより、そんな人がいたら偉い。
吉澤嘉代子の「ケケケ」はムダ毛の歌。シンガー・ソングライターの彼女は、ある日、自らを守るために生えるムダ毛を、なぜ剃らなければいけないのだろうという疑問を抱き、それをこの歌にしたのだと言う。素晴らしいセンスだ!
サウンドは『キューティーハニー』あたりの1970年代に流行ったアニメ・ソングのようで、悪ノリしたか吉澤嘉代子は、詞の中でムダ毛を「悲劇の戦士」と歌っている(笑)
同アルバムに収録された他の5曲にも、彼女のユニークな個性は感じられるが、「ケケケ」の「なんだ、これ!?」感は飛び抜けている。と言って、違和感を生んでいるわけではなく、一人のアーティストの作品として、6つの作品はほど良いバランスを保っている。これからの活躍に大いに期待したい新人だ。

「面白い」でも心は動かせる

さて、そんな吉澤嘉代子の「ケケケ」に焦点を当てて何が言いたいのかというと、今どきの演歌・歌謡曲の世界にも「ケケケ」のような、下らないほど突き抜けた歌があってもよいのではないかということ。
演歌・歌謡曲などというジャンル分けがなく、流行歌として一括りにされていた時代、1950~1970年代には笠置シヅ子が「ジャングル・ブギー」や「買い物ブギー」を歌い、美空ひばりは「お祭りマンボ」、小林旭は「恋の山手線」や「自動車ショー歌」を、アントニオ古賀は「クスリルンバ」を歌っている。

美空ひばり
美空ひばり プレミアムパッケージ「Best 70+1 Songs」
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小林 旭
小林旭コンプリートシングルズVol.2
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小林旭
小林 旭 全曲集
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どれも歌詞を読んだところで、感動を誘う物語やメッセージがあるわけではないが、単純に面白い。
例えば「買い物ブギー」は笠置のステージのために作られた歌ということもあるが、ショーを盛り上げることを主に書かれているので、創作の自由度が高い。それが庶民には笠置のダイナミックな表現も手伝って「面白い」と受け入れられた。「面白い」でも心は動かせるのだから、そうした歌がもっと作られてもいいではないかと思うのだが、カラオケブーム以降の演歌・歌謡曲はどうも優等生的で「下らない」と言われそうな歌がほとんど見当たらない。1980年代にはまだ、さいまんぞうの「なぜか埼玉」、殿さまキングスの「ブラジル音頭」、津田耕治の「エアロビクスおじさん」など、変な歌・おかしな歌が時々あったのだが…。

「金太郎飴を切ったみたい、なんて言われたくない」でも…

先に「創作の自由度」という言葉を用いたが、現在の演歌・歌謡曲の分野は、この点でかなりの制約を受けており、「面白い歌」「下らない歌」の誕生を阻止している。
例えば”今どきの演歌”を10曲も並べてみれば、姉妹品かと思われても不思議のない作品が2つや3つは見つかる。「恋に破れた主人公が旅に出て、未練に苛まれる」、或いは「旅先で新たな意欲を得る」というのが主流。他に「あなたが好きで好きで仕方ない」と恋に溺れている系統の歌、ほのぼのと夫婦愛を描いた歌、父母への愛情や感謝を綴った歌、漁場などを舞台に男の生き様をテーマにした歌もあるが、パターンは多くないので分別は容易だ。
或る売れっ子作詞家は

「金太郎飴を切ったみたいに同じような歌ばかりだなんて言われるのは面白くないし、我々だって日々新しいもの、面白いものを考えて作っているんです。でも、そういう歌は採用してもらえない。結局、似たような歌が選ばれて、さらに似たような歌が増える傾向にあるんです」

とこぼす。

本来ヒット曲というのは特定のファンの枠を越えて支持されてこそ生まれるもの(現在ではAKBグループに代表されるような例外もあるが)。時代の流れによる社会構造の変化という要因もあるが、流行歌は「リンゴの歌」にしろ「お富さん」にしろ「伊勢佐木町ブルース」にしろ、大人から子供までが聴いて歌っていた。それが今、演歌で世代を問わず歌われるのは石川さゆりの「天城越え」を筆頭に数えるほどしかないだろう。

氷川きよしの「きよしのズンドコ節」は“優等生的な歌”ではない

平成に入り、子供も歌っていた演歌で思い出すのは氷川きよしの「きよしのズンドコ節」だが、これは小林旭の「ズンドコ節」「ダンチョネ節」「アキラのホイホイ節」といったシリーズの流れを汲むもので、いわゆる優等生的な歌ではない。

小林 旭
小林旭コンプリートシングルズVol.1
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小林 旭
”極上演歌特盛”シリーズ 小林旭
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小林 旭
小林旭コンプリートシングルズVol.1
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氷川本人はキャラクターそのままに真面目に丁寧に歌っていたが、“ズンドコ”というユニークで印象的なフレーズが、氷川の持つ親しみやすい印象と共に子供たちの感性に訴えたものだろう。が、なかなかそんな歌がシングル曲として演歌市場に出回ることはない。
いわゆる売れ線・売れ筋というのは確かにあるが、みんながその方向に向かったら市場には似たような商品しか並ばなくなり、消費者を飽きさせることになる。近年の演歌・歌謡界はちょうどそんな状況にあると思うのだが、なかなか売れ線から外れた歌に出合うことがない。

メロディーやアレンジの魅力もあってこその音楽

演歌・歌謡曲の世界では「詞がお姉さんで曲が妹」という古賀政男の言葉を拡大解釈して、歌詞こそが演歌・歌謡曲の根幹を成すかのように喧伝されているが、果たして「お富さん」が売れた当時、その内容を正確に理解していた国民は何割いただろう? 三波春夫がうたった「世界の国からこんにちは」の詞に感動してレコードを買った歌謡ファンはどれほどいただろう?

三波春夫
三波春夫?シネマ・ソング・ブック
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メロディーやアレンジの魅力もあってこその音楽だし、だからこそ「お富さん」も「世界の国からこんにちは」も大ヒットし、先に挙げた「下らない歌」も巷に流れたのだ。

演歌・歌謡界は“歌の魚屋”になった

実際のところ、楽曲の金太郎飴化は演歌・歌謡曲の分野のみで見られるわけではなく、近年はJ-POPに於いても同じようなテーマ、歌詞の作品が次から次へと生産されて、「会いたくて会えなさすぎ」「もう一人じゃなさすぎ」などと揶揄されている。
音楽や創造の世界は自由で、何が生まれるか、何が待っているかわからないというのが、楽しみの一つであることは間違いなく、そうしたところから例えば1977年には「昔の名前で出ています」(小林旭)、「北の宿から」(都はるみ)、「津軽海峡・冬景色」(石川さゆり)といった大ヒットが、「渚のシンドバッド」(ピンク・レディー)、「青春時代」(森田公一とトップギャラン)、「雨やどり」(さだまさし)などと共にヒット・チャートの上位に名を連ねたのだ。

小林旭
全曲集
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都はるみ
都はるみ全曲集 花はあなたの肩に咲く
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ピンク・レディー
渚のシンドバッド (Original Cover Art) – Single
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さだまさし
さだまさし/グレープ ベスト 1973-1978
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そして、どんな歌と出合えるかわからないという期待感は、確実に歌謡界の活性化につながっていた。何が待っているか、どんな商品と出合えるかわからないという点でそれは、大型ディスカウントストア「ドン・キホーテ」のようなものだったかも知れない。
それが買う側の利便性や売る側の都合によって次第に専門店化し、演歌・歌謡界は“歌の魚屋”になった。当初は様々な種類が店先に並び、よく売れもして賑わったが、魚より肉を好む世代が増えたことで徐々に客足が遠のき、アジやマグロ、サンマなど何種類かの売れ筋のみを並べて、魚をよく食べる中高年を相手に商いをするようになった。これでは幅広い世代はもちろん、普段は魚に縁のない客が店先を覗くわけがない。
演歌・歌謡曲が活気を取り戻すには、「魚」に特化することではなく、「美味い物」を多彩に取り揃えた店というイメージを取り戻すことが必要だ。そもそも演歌の世界は「美味い物」=「(歌の)上手い者」で作られていたはずなのだから。

市場が限られているため、不特定多数を対象にした「流行歌」を作って売るには勇気が要るが、市場が限られていることをわかっていながら「演歌」を作っていたのでは、流行歌は生まれそうもない。
演歌・歌謡曲の分野がもっと多彩になるために「ケケケ」のような歌が現れないものかと、吉澤嘉代子のあっけらかんと歌う様子を見ながら思う。

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