2014年の演歌・歌謡曲シーンを振り返って
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特集
世相と共に2014年を振り返る
2014年も色々あったが、残念ながらヒーローやヒロインよりも、悪役の方が印象に残っている。それも、小悪党の割に社会性の欠如という点ではとんでもないレベルの連中が多かった。憶えていることすら、記憶力や記憶容量が勿体ないと思ってしまうが、さて、演歌・歌謡曲の分野に目を向けてみると、今度は逆に憶えていること、忘れられないことがとても少ない。
今年も数多くの方々が、大きな足跡を残して旅だった
五木ひろしの「よこはま・たそがれ」他で知られる作詞家で作家の山口洋子さんが9月6日に亡くなったが、今年もやしきたかじん(歌手、1月3日)、野崎眞一(作曲家、同27日)、安西マリア(歌手、3月15日)、神戸一郎(歌手、4月27日)、池多孝春(編曲家、6月12日)、長田あつし(歌手、元・殿さまキングス、元・オヨネーズ、8月2日)、山口淑子(歌手、李 香蘭、政治家、9月7日)、桜庭伸幸(作編曲家、9月15日)、堀内 護(歌手、元・ガロ、12月9日)といった方々が、歌謡界に大きな足跡を残して旅立った。
スター歌手、ヒット歌手や名作家が次々に他界してしまうのは世の常だから仕方ないが、後継が育たないというのは問題だ。
昨年に続き、演歌・歌謡界では福田こうへい
今年も歌謡界はAKBグループ、ジャニーズ事務所所属アーティスト、EXILE系が圧倒的な勢力を誇り、μ’sやキング・クリームソーダといったアニメ関連アーティストが大活躍。その中で演歌・歌謡曲は、昨年に続き福田こうへいが一人気を吐いた印象。
オリコンのシングルランキングを見ても、福田の「南部蝉しぐれ」と「峠越え」が、演歌・歌謡曲の1、2位を独占。これを氷川きよしの「大利根ながれ月」「ちょいときまぐれ渡り鳥」が追い、水森かおりの「島根恋旅」、島倉千代子さんの遺作となった「からたちの小径」が続く。以下には三山ひろし「あやめ雨情」、五木ひろし「桜貝」、山内惠介「恋の手本」といったところが名を連ねるが、10年前は10万枚と言われたヒットの基準が、今では3万に下がっていることからもわかる通り、歌謡界全体でCDの売り上げは大きく落ち込んでおり、活況というには程遠い。
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すでに多くの方がご存知だろうが、福田は地元・岩手の事務所と、東京で所属するプロダクションとの間でトラブルに巻き込まれ、2015年以降の活動が順調に行われるかどうか予断を許さない状況。せっかく現れた期待の星だけに引き続いての活躍を望みたいが、金絡みでイメージダウンも懸念されることから失速の可能性は残念ながら否定できない。
キーワードとなる”演歌男子”
そんな中で明るい話題を探すとなれば、山内惠介、パク・ジュニョン、川上大輔、花園直道、ほか若さと恵まれた容姿で女性ファンを熱狂させた”演歌男子”の躍進を、最初に挙げねばならないだろう。
2000年の氷川きよしデビュー以降、氷川に続くイケメン演歌歌手の登場は待ち望まれ、候補者も現れたが、それが今年ようやくにして”ブーム”と呼ばれる状況を生み出した。
それには、氷川と同じく作曲家の水森英夫氏を師匠に持ち、”第二の氷川きよし”への期待を浴びてデビューした山内の台頭が大きい。相応の人気を得るまでに山内は10年以上の年月を要したが、その間に線が細く中性的な印象を漂わせていた少年は、大人の魅力と磨かれた容姿を備える男性へと成長していた。
韓流人気が下がったことで中高年女性の視線は国内に向き始め、そこに山内をはじめとした”演歌男子”がいた。
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実際のところ、”演歌男子”という言葉が抱かせる期待感ほどに、彼らのCD売り上げは伸びていない。しかし、伸びる可能性はある。来春、山内は過去2番目の売り上げを記録した「恋の手本」(最も売れたのは「風蓮湖」)に続く、注目のニュー・シングルを発売するが、その反響は大いに気になるところだ。
現代における時代劇に近い演歌、そこに必要なもの
さて、『紅白歌合戦』出演歌手の顔ぶれを見ても、演歌・歌謡曲分野では、福田こうへいが昨年に続き出場するくらいで、他に目新しさはない。若手とされる水森かおりでさえ12年連続出場なのだから、新鮮な人材の登場に期待したいところだが、現在の演歌・歌謡界は、氷川がデビューした頃とは正反対の、男高女低の状態にある。水森に続くのはこの人!と業界内に実力を高く評価する声の多い市川由紀乃が、『日本レコード大賞』で日本作曲家協会選奨を受けたが、”紅白”初出場を果たすには実績・人気共に物足りず、その他の若手女性歌手については市川と同等あるいはそれを下回る状況。
主に演歌で描かれる物語や人物像は、今よりも時代を遡ったもの、または遡ったように感じられるものがほとんどで、簡単に言ってしまえば、現代における時代劇に近い。舞台設定や小道具に、親近感より違和感の方が大きい状況の中で、自然に、しかも深く明瞭に歌の主題となるものを伝えるには、相応の演技力が必要。プロとしてデビューし、活動を続けている点で才能は認められているはずだから、足りないとすれば努力。もちろん、それは歌い手のみに求められるものではなく、素材である歌手自身が精進し、さらにそれを売り出すレコード会社、プロダクション・スタッフが素材の魅力を十二分に引き出すアイディアや戦略を持ち、実践しなければならない。が、それは口で言うほど簡単ではなく、簡単ではないからなかなかできない、なかなかできないから売れないという残念な循環の中に、多くの若手歌手は呑み込まれていると言えるだろう。
逆風の中の”新人”
逆風と言ってもいい状況の中、それでも新人はデビューしている。と言っても、田川寿美、永井みゆきら有望な人材が次々に歌謡界に現れた時代とはわけが違う。演歌系の新人として挙げられるのは、徳間ジャパンから1月にデビューした工藤あやの、4月に日本クラウンから出た竹村こずえの2人くらい。共に歌唱力やキャラクターへの評価は高い。デビュー2年目の加速に期待する。
そして2015年の新人だが、クラウンから女性が一人、コロムビアから男性が一人登場するらしい。この厳しい時代、中途半端な歌唱力やタレント性では成功はほぼ不可能。そこを踏まえてのデビューだとすれば、相当に期待してよいはず。詳報を待たれたい。
「よい歌を、上手い歌手がうたうもの」
さて、改めて一年を振り返ると、2014年を代表する歌は「レット・イット・ゴー~ありのままで~」だったということで多くの方にご賛同いただけると思う、歌い手は松たか子で。この曲は、メロディーラインが心地よく、歌手がそれをうたい切った時に、聴き手が歌唱力の素晴らしさを実感できる点が大きな魅力。松の歌は安定感がある上に、さすがに女優。感情の機微を伝える表現力が卓越していた。単純に言ってしまえば、よい歌を、上手い歌手がうたったから、みんなが気に入ったということなのだが、本来、演歌・歌謡曲こそ「よい歌を、上手い歌手がうたうもの」だったはず。
それなのに、その分野から大ヒットが生まれないのは、”よい歌”がないからなのか”上手い歌手”がいないからなのか? じっくりと考え、答えを探しながら年を越し、新年はその答えを胸に演歌・歌謡界を眺めてみたいと思う。
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